こんにちは。疲労回復整体アカデミー講師の岡村です。
先日、YouTubeの施術モニターで「20年前からあくびをした時に顎が外れるようになった」という患者さんが来られました。
患者さんは40代男性・主訴は「習慣性額関節脱臼」
もともと子供の頃から右顎に違和感はあったそうですが、20年前に本格的に外れて病院で元に戻してもらったのをキッカケに、それ以来手を使って元に戻すようになったということです。
「気を抜いて口を開けると、右顎が外れそうになります」と仰っていました。
座位と仰臥位でそれぞれ左右の顎関節のROM検査を行いましたが、座位では右の顎関節の動きが硬くなっていて、アライメントのずれが見受けられました。
一方、仰臥位では左右差は出ていましたが、座位の時ほど動きは悪くありませんでした。
このことから、歪みを解除していけば改善していきそうだなと予想できました。
どういうことかと言うと、構造的な問題(物理的に組織が傷ついて壊れている)であれば、肢位を変えてもROMの硬さは変わらないので座位でも仰臥位でも同じように動きが悪くなっているはずです。
今回のように座位の時はROM制限があり、仰臥位ではROM制限がないというのは構造的な問題が起きてない可能性が高く、生理学的な問題(反射による歪み)による影響が強そうということです。
構造的な問題というのは、歪みが改善してそこにかかる負荷が減っても組織が修復するまでに時間を要するため、一般的に症状が改善するまでに時間がかかります。
一方、構造的な問題まで発展していなければ、歪みを解除するとその場で症状がなくなるというケースも多いです。
今回の事例はまさにそういった事例でした。
また、体調検査でも引っかかる箇所が少なく、体調が良いと判断できたので「良い結果が出そうだな」と思いました。
まずは検査をします
他の症状として、「半年に1回寝違えて右肩に痛みが出る」「1年に一回ギックリ腰になる(ここ2~3年)」も訴えていたので首回りや腰周りもチェックしようと思って検査を行いました。
仰臥位で検査すると、以下の異常が確認できました。
- 顎関節ROM検査:右側のROM制限
- 上部胸椎ROM検査:右T3のROM制限
- 股関節ROM:右側の外旋時ROM制限
既往歴としては
- 20年前に足首(腓骨)を骨折(左右は覚えてない)
- 中2の時に手首のヒビ(左右覚えてない)
- 12歳の時に盲腸で手術
- 12歳の時に左手拇指の付け根をカッターで切って縫った
- 3歳の頃、左足裏にガラスを踏みつけたあとがある
ということを事前に聞いていたのでそれぞれのROM制限との関連をTLで調べていきました。
すると、右顎関節・右T3・右股関節それぞれのROM制限が、右足腓骨の骨折箇所と関連があることが分かりました。
試しに、右足腓骨の骨折した箇所を触っている時と触ってない時で、開閉した感覚が変わるかどうかやってもらいました。
すると、「腓骨を触ってもらってる時の方が顎が安定する感じがあります」ということだったので、全体を調整してまだ残ってくるようなら腓骨の骨折箇所を調整しようと思いました。
調整していきます
施術はCアジャスター・Aアジャスター・循環ホットパックを使って全体の歪みを調整。
その後シェイクと骨伝導で全体を整えた後に再検査すると、右T3も右股関節もROM制限は解除されていました(ただし、左右差は残る)。
右の顎関節に関しては、逆に硬さが強調されていました。
患者さんも「さっきより口が開きにくくなった気がする」と仰っていました。
歪みを解除していくとその箇所を引っ張る要素が減るので、このように本来の歪みが強調される時があります。
もちろん強調されずにさらに硬さが取れるという場合もあるので、ケースバイケースです。
このタイミングこそがその箇所にアプローチするべきタイミングで、逆に全体の歪みを解除してないまま調整してもうまくできなかったり、問題がキレイに取れなかったりします。
今回は右の顎関節の変位に対して水素が相性良さそうだったので、水素を当てて調整しました。
調整後に口の開閉をしてもらうと、「あ、さっきよりも安定してます。今までと全然違う感じがします」と患者さんも変化を実感されていました。
ROM制限は解除されたものの、左に比べるとまだ硬さがあったので、再度TLで右足腓骨の骨折箇所との関連を調べました。
やはり反応があったので右足腓骨の骨折箇所をココローラーで調整。
調整後は右顎関節の硬さがほぼ完全に無くなり、右股関節と右T3の硬さも完全に取れていました。
口の開閉をしてもらうと「全然外れる感じがしないです!」と驚かれていました。
「もともとの顎関節の歪みが、20年前の右足腓骨の骨折をキッカケに強調されて、外れやすくなっていたんだと思います。」
「半年に1回ある寝違えは右T3の硬さ、1年に1回あるギックリ腰は右股関節の硬さが影響して起こっていた感じでしたが、どちらも硬さがなくなったので今後はほとんど起こりにくくなると思います。」
と患者さんに説明しました。
予後予想の判断材料
今回の症状は事前に予後予想をある程度立てることができ、結果もその通りになりました。
予後予想をする時の判断材料に使ったのは次の2つです。
- 生理学的な問題か構造的な問題か
- 体調検査
生理学的な問題か構造的な問題かを見分けるコツは、各肢位でROM検査を行うということです。
前述したように、もし構造的な問題が起こっていれば、どの肢位でも同じようにROM制限(硬さ)があります。
今回のように、座位と仰臥位で同じように動かした時に硬さが変わるというのは、構造的な問題が起こってない可能性が高いということです。
体調検査はその名の通り体調を見る検査で、「どれくらいの刺激量に耐えれるか」「予後治りやすいかどうか」「次回の施術までどれくらい空けれるか」といったようなことを予想する上で役立ちます。
問診や検査結果を材料に分析を行い、施術を行う前に予後予想を伝えておくことは、患者さんと信頼関係を構築する上で非常に重要です。
今回の患者さんはもともとの体の状態が良かったので1回で症状が改善しましたが、患者さんの体の状態によっては結果が出るのに数週間、数か月かかるケースもあります。
施術後にそういった話をしてしまうと、どうしても「後出しじゃんけん」になってしまうので「痛みが取れなかったから先生はこんな言い訳をしてるんじゃないか…」と思われても仕方ありません。
それで患者さんが来なくなってしまうと、治るものも治らなくなってしまいます。
施術前に予後予想を立てて、予後が悪そうな場合は必ず事前に患者さんに伝えるようにしてみてください。
今回は「施術前の患者さんへの事前説明」について解説してみました。
患者さんは「人間」なので、「体のケア」がうまくできても、「心のケア」ができないと治っていきません。
少し意識するだけで結果が変わるところなので是非参考にしてみてください。